「ソニック」シリーズと言えば、そのスピード感に特徴がありますが、そもそも第1作の「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」がスピード感のあるゲームになった理由が、昔の書籍「ゲーム・マエストロ VOL.2 プロデューサー/ディレクター編(2)」の中裕司さんのインタビューに載っていました。
中裕司さんは「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」のメインプログラマーなのですが、プログラム的にはその前に手がけたカプコンの「大魔界村」の移植の影響が大きかったとのことです。
中 (前略)完全移植に近いものを作って、勉強させてもらいました。その発展系のプログラムが『ソニック』なんですよね。(後略)
このように、プログラム的には「大魔界村」から大きな影響を受けた「ソニック」だったのですが、そこにスピード感が加味されたのは中さんのスピード志向から。
中 (前略)『大魔界村』は『スーパーマリオブラザーズ』(85年・任天堂)と同じで、1インタラプトに2ドットしか動かないんです。でも、『ソニック』では『マリオ』がゆっくりと動くのが嫌だったんで、上手くなったらすぐに走り抜けられるように、スピードを上げようと思ったんです。(後略)
ちなみに中さんはスピード感には以前からこだわりがあったらしく、今でもシリーズとして継続中のRPG「ファンタシースター」を手掛けた際には、3Dダンジョン内を超高速で移動できるプログラムを組まれていたとのことです(※3D酔いが起こるという理由で実装はされず)。
個人的な感想としては、ただゲームとしての特徴を作るためにスピードに目を付けたのではなくて、ゲームに慣れて上手くなってきたら、楽勝のところなんか、さっさと走り抜けたいよね、というプレイヤー目線からのスピード感の導入となっていたところもポイントかな、と思います。
なお、中さんの仕事の流儀としては、
中 (前略)どんなゲームを作る時もそうなんですけど、アイデアがあってもむりやり新しいゲームを作らない。実現に必要な技術を検証して、それが実現可能になった時に「じゃあ作ろうか」となる。(後略)
とのことで、このあたりの地に足がついた感覚も、また、重要なのかなと感じました。
ちなみに中さんは「ソニック」をマスターアップ後に一度、セガを辞めているのですが(※理由は、「ソニック」に対する評価が会社と分かれたためと、高卒9年目で16万という薄給の2つ)、再びセガで仕事をするようになった経緯には、後の「クラッシュ・バンディクー」のプロデューサー、マーク・サーニーがからんでいるとのことです(※そのため、「ソニック・ザ・ヘッジホッグ2」「ソニック3」「ソニック&ナックルズ」の3作品はアメリカで作られたのだとか)。